はじめに
第25話で、私はNVIDIAの決算を前に、追加投資を見送りました。
☞【第25話】 NVIDIA決算前に追加投資を見送った理由|何も買わないという投資判断
NVIDIAだけでなく、Marvell、AMD、Credo、ARMについても、決算前には買わないと決めました。
NVIDIAの業績を悲観していたわけではありません。
むしろ、AIインフラへの投資は続き、NVIDIAも成長を続ける可能性が高いと考えていました。
それでも買わなかったのは、
良い決算が出ることと、決算後に株価が上がることは同じではない
と考えたからです。
では、実際の決算と、その後の株価はどうなったのでしょうか。
そして、決算前に何も買わなかった判断は正しかったのでしょうか。
この記事では、単に「上がったから正解」「下がったから不正解」と結論づけるのではなく、事前に立てた判断を後知恵なしで検証してみます。
読者の皆さんが、自分の投資判断を振り返るときにも使える方法を整理します。
NVIDIAの決算は十分に強かった
2026年8月26日、NVIDIAは2027年度第2四半期の決算を発表しました。
売上高は962億ドル。
前年同期比では106%増加し、前四半期比でも18%増加しました。
データセンター部門の売上高は890億ドルとなり、前年同期比117%増でした。
非GAAPベースの1株利益は2.22ドル、粗利益率は75.0%でした。
さらに会社側は、次の四半期の売上高を1,080億ドルと見込みました。
売上高が前年同期の2倍を超え、それでも次の四半期に一段の成長を見込んでいます。
数字だけを見れば、AI投資の勢いは衰えていませんでした。
一方、次の四半期の粗利益率は74%前後が見込まれ、わずかな低下も示されました。
売上高が増え続けても、利益率まで際限なく上昇するわけではありません。
NVIDIAが巨大になればなるほど、市場から求められる成長の絶対額も大きくなります。
決算は強いものでした。
しかし、株価にとって重要なのは、決算が良いか悪いかだけではありません。
その数字が、市場の高い期待をどこまで上回ったのか。
そこまで見なければ、決算後の株価は判断できません。
好決算でも、株価が上がるとは限りません
決算を見るとき、売上高や1株利益だけを確認して終わってしまうことがあります。
しかし、株価は企業業績だけで決まるわけではありません。
大きく分けると、次の四つを確認する必要があります。
| 確認する項目 | 株価に与える影響 |
|---|---|
| 売上高・EPSの成長 | 企業価値を押し上げます |
| 次期の業績見通し | 将来の成長期待を左右します |
| 粗利益率 | 成長の質や収益力を示します |
| PERや金利 | 同じ利益に対する株価評価を変えます |
業績が伸びても、市場の期待に届かなければ株価は下がることがあります。
反対に、業績が少し悪くても、それ以上の悪化が株価に織り込まれていれば上昇することがあります。
つまり、決算を見るときには、
実際の業績
だけでなく、
会社の見通し、市場の期待、現在の株価評価
を重ねて見る必要があります。
最初の一夜だけなら、買わなかったことは機会損失でした
日本時間8月27日深夜、NVIDIAの株価は小幅に上昇しました。
この時点だけを見れば、決算前に買わなかった私は、上昇の機会を逃したことになります。
買っていれば、多少なりとも利益が出ていました。
それは事実です。
しかし、投資判断を翌日の株価だけで評価すると、判断の基準が崩れやすくなります。
上がったから買うべきだった。
下がったから買わなくてよかった。
そのような答え合わせを続けていると、投資は次の値動きを当てるゲームになってしまいます。
第25話で私が考えていたのは、NVIDIAの翌日の株価ではありませんでした。
決算前に追加投資するだけの価格、数量、リスクの条件がそろっているのか。
その問いに対して、私は「まだそろっていない」と判断しました。
【図1:NVIDIAの日足チャート】

決算後も株価は一直線に上昇したわけではなく、下落を挟みながら推移しました。
NVIDIAが良くても、Marvellまで上がるとは限りません
NVIDIAの決算は、AIインフラへの投資が続いていることを示しました。
しかし、NVIDIAの好決算によって、AI関連銘柄のすべてが同じように上昇したわけではありませんでした。
日本時間8月27日深夜、NVIDIAが小幅に上昇する一方で、Marvellは下落しました。
同じAI関連の半導体企業でも、市場から求められているものは異なります。
- NVIDIAには、AI計算基盤の圧倒的な成長
- Marvellには、カスタム半導体やデータセンター向け通信事業の成長加速
- AMDには、AIアクセラレーターでNVIDIAを追う道筋
- ARMには、高い株価評価を正当化するロイヤルティー収入の増加
- Credoには、高速通信市場の拡大と急成長の継続
これらが求められています。
NVIDIAの決算で確認できたのは、AIインフラ市場全体の需要が強いことです。
しかし、それだけで個々の企業の受注、競争力、利益率まで確認できたわけではありません。
ここから得られる一つ目の教訓は、
業界全体の成長と、自分が保有する企業の成長を分けて確認する
ということです。
AI市場が成長することと、その企業の株価が上がることは同じではありません。
【図2:Marvellの日足チャート】

Marvellは250ドル近辺から200ドル台前半まで調整し、NVIDIAとは異なる値動きになりました。
EPSが伸びても、PERが下がれば株価は上がりません
☞第24話 AI半導体株を分析して買っても、熱狂を避けられなかった|株価より利益成長を見る
日本時間8月28日深夜になると、NVIDIAやMarvellをはじめ、半導体関連銘柄は広く売られました。
NVIDIAの決算が悪かったからではありません。
市場では金利上昇への警戒が強まり、成長株全体に売りが広がりました。
株価は、単純化すると次の式で考えられます。
株価=EPS×PER
企業の利益が増えれば、EPSは上昇します。
一方、市場金利が上昇したり、投資家がリスクを避けたりすれば、許容されるPERは低下します。
そのため、EPSが伸びていても、PERがそれ以上に下がれば株価は下落します。
NVIDIAの決算は、AI需要の強さを確認する材料になりました。
しかし、それだけでは、金利、株価水準、過度な期待という三つのリスクを消すことはできませんでした。
ここから得られる二つ目の教訓は、
企業の成長仮説と、現在の株価水準を分けて考える
ということです。
良い企業であることと、今が良い買い場であることも同じではありません。
Credoの急落が示した、個別銘柄のリスク
その後、Credoの株価は大きく下落しました。
日足チャートを見ると、280ドル前後まで上昇していた株価が、短期間で160ドル台まで下がっています。
私はこの下落後、169.5ドルで30株を追加購入しました。
NVIDIA決算前には何も買わず、実際に価格が下がった段階で、数量を抑えて追加したことになります。
ただし、Credoの下落をすべてNVIDIA決算や半導体市場全体のせいにすることはできません。
個別銘柄が大きく下落したときには、少なくとも次の要因を分けて考える必要があります。
- 市場全体のリスク回避
- 高すぎた期待の修正
- 業績や将来見通しへの不安
- 株式市場の需給
- その企業に固有の材料
私はCredoの成長性を評価しています。
しかし、成長性を評価することと、どの価格でも買うことは同じではありません。
NVIDIA決算前に買わなかったことで、少なくとも高値で追加投資することは避けられました。
そして価格が大きく下がった後に、30株という限定した数量で追加することができました。
ここから得られる三つ目の教訓は、
決算前に投資余力を残すことには、次の判断を選べる価値がある
ということです。
【図3:Credoの日足チャート】

280ドル前後まで上昇した後、160ドル台まで急落しました。私は169.5ドルで30株を追加しました。
何日後の株価で、判断を評価するのでしょうか
今回の答え合わせで最も難しかったのは、判断を評価する時間軸でした。
決算直後だけを見れば、NVIDIAを買わなかったことは機会損失でした。
翌日まで見れば、半導体株全体が下落し、買わずに待った意味がありました。
さらに9月4日には、NVIDIA、Micron、Marvell、AMD、ARM、Credoの多くが反発しました。
どの日を基準にするかによって、「正解」と「不正解」は簡単に入れ替わります。
だからこそ、投資判断を株価の結果だけで評価することには限界があります。
判断を振り返るときには、次の四点を確認する必要があります。
- 判断した時点で、どの情報を持っていたか
- 上昇と下落をどこまで想定していたか
- どの程度の損失まで受け入れられたか
- 事前に決めた条件に従って行動したか
株価が下がった後で「やはり危険だと思っていました」と考える。
株価が上がった後で「本当は買うつもりでした」と考える。
人の記憶は、結果に合わせて都合よく書き換わることがあります。
今回、私は決算前の判断を第25話として残していました。
そのため、結果を見てから理由を作り直すのではなく、事前に考えていたことと実際の結果を比較できました。
これは、投資判断を記録する大きな意味だと思います。
決算前に追加購入するかを決める5つの質問
今回の経験から、決算前に株を追加購入するときには、少なくとも次の五つを確認した方がよいと考えるようになりました。
1.良い決算は、すでに株価に織り込まれていませんか
市場が好決算を予想している場合、良い数字が出るだけでは株価が上昇しないことがあります。
現在の株価が、どこまでの成長を前提にしているかを考える必要があります。
2.決算をまたいで買う理由を、一文で説明できますか
「AI関連だから」「上がりそうだから」だけでは、下落したときに判断を維持できません。
どの数字が、どの程度改善すると考えているのかを具体的にしておく必要があります。
3.期待どおりの決算でも下落する可能性を想定していますか
決算が市場予想を上回っても、会社見通し、粗利益率、金利、材料出尽くしなどによって株価は下落します。
好決算と株価上昇を同じものとして考えないことが重要です。
4.下落した場合に追加購入できる余力を残していますか
決算前に予定資金をすべて投入すると、株価が下がったときに選択肢がなくなります。
最初の購入数量を抑えることや、何も買わずに待つことも、投資戦略の一部です。
5.翌日の株価だけで判断を評価していませんか
決算翌日の株価は、市場の最初の反応にすぎません。
数日後、数週間後に何が変わったのかを確認し、事前のシナリオと照合する必要があります。
何も買わなかった判断は、正しかったのでしょうか
私は、今回の判断を「大正解だった」とは考えていません。
NVIDIAの決算は強く、決算直後の上昇を取ることはできませんでした。
その意味では、機会損失がありました。
一方で、その後の不安定な値動きに巻き込まれず、MarvellやCredoを高値で追加購入することも避けられました。
したがって、今回の判断は、
上昇を当てた判断ではなく、
自分が負う必要のないリスクを避けた判断でした。
と評価するのが最も近いと思います。
何も買わないという選択から、直接的な利益は生まれません。
株価が上がれば、置いていかれたようにも感じます。
しかし、現金を残して待つことで、後から価格と数量を選び直すことができます。
その選択肢には、証券口座の損益画面には表示されない価値があります。
おわりに――後知恵ではなく、事前のシナリオと比べます
決算前に何も買わなかった私は、NVIDIAの上昇を取り逃しました。
その一方で、その後の下落局面では、新たな含み損を抱えずに済みました。
どちらも事実です。
だから、今回の判断を「正解」か「不正解」かの二択で評価するつもりはありません。
重要なのは、翌日の株価を当てたかどうかではなく、事前に考えたシナリオに基づいて行動できたかどうかです。
第25話で選んだ「何も買わない」という判断は、株価の方向を正確に予想したものではありませんでした。
それでも、決算という不確実性の高い局面で、自分の投資ルールを守ることはできました。
今回の答え合わせから得た結論は、次のようなものです。
投資判断は、翌日の株価ではなく、
事前に立てたシナリオと照らし合わせて評価します。
次の決算で株価が上がるか、下がるかは分かりません。
それでも、何を確認し、どの価格で、どれだけ買うのかは、事前に決められます。
何も買わないことは、相場から降りることではありません。
条件がそろうまで判断を保留し、次の選択肢を残すことも、投資の一部なのだと思います。

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