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第21話 私は「儲かる話」ではなく、「儲かる構造」を見るようになった

目次

はじめに

前回まで、私が過去に経験したさまざまな投資の失敗について書いてきました。

👉第20話「成功体験は、時に失敗よりも危険だった」

振り返ってみると、私が失敗した案件には、ある共通点がありました。

それは、

「儲かる理由」を聞いていたけれど、「儲かる構造」までは見ていなかった。

ということです。

「これから市場が大きくなる」

「参加者が増えれば収益が伸びる」

「利益率が高い」

「早く始めた人ほど有利」

どれも、それだけ聞けば魅力的です。

そして厄介なのは、こうした話が必ずしもすべて嘘とは限らないことです。

市場が成長することもある。

利益率が高い商品もある。

実際に利益を出す人もいる。

だからこそ、私は何度も判断を誤りました。

今回は、そのことを強く実感した「転売ビジネス」の経験について書こうと思います。

10万円の転売セミナーに参加しました

当時の私は、投資だけでなく、

「会社員以外の収入源を持ちたい」

という思いも持っていました。

そんなときに知ったのが、インターネットを使った転売ビジネスでした。

安く仕入れて、高く売る。

仕組みそのものは、とてもシンプルです。

私はそのセミナーに参加しました。

参加費は、

10万円。

そこで転売について学ぶとともに、運営側が用意した転売プラットフォームを利用できるようになります。

サイトには商品が掲載され、会員はそこから商品を購入できます。

自分で一から商品を探さなくても、運営側が商品を用意してくれる。

当時の私には、それがとても魅力的に見えました。

熱海で行われた「実践」

セミナーは、熱海の古い保養施設で1泊2日で行われました。

初日は夕方に現地集合。

講師は、主催者の仲間で実際に転売をしている人たちでした。

利益とは販売価格から仕入れ代金や送料などを引いたもの。

クーポンを利用する。

メルカリを使う。

試供品にも値段が付くことがある。

もちろん参考になる話もありました。

ただ、商売をしている人なら知っているような内容も少なくありませんでした。

そして、いよいよ「実践編」が始まります。

参加者自身がネット通販サイトを検索し、

「転売すれば利益が出そうな商品」

を探すのです。

良い商品を見つけると、講師から褒められます。

そして講師側がその商品を大量購入して転売し、利益の一部を見つけた参加者にも分配するという仕組みでした。

私も見つけました。

一体あたり900円ほどの利益が出そうなフィギュアでした。

褒められました。

そして後日、私にも利益が振り込まれました。

2,000円でした。

「30秒ぐらいじゃないですか」

このセミナーで、今でも忘れられない場面があります。

参加者の一人が質問しました。

「どれくらいで稼げるようになりますか?」

講師は真顔で答えました。

「30秒ぐらいじゃないですか。」

今でも、この言葉をはっきり覚えています。

当時の私は、それを「自信の表れ」くらいに受け取っていたのかもしれません。

しかし、この後の経験は、そんなに簡単なものではありませんでした。

実際にやってみるとそう簡単ではありません。

価格差があっても必ず売れるわけではない。

競合もいる。

在庫リスクもある。

価格も動く。

継続的に利益の出る商品を見つけ続けるには、それなりの時間が必要でした。

私は次第に感じ始めました。

説明を聞いていたときに想像していたほど、簡単な世界ではない。

「数秒で8万円」

セミナーの資料には、転売で利益を出すためのさまざまなノウハウが紹介されていました。

例えば、ある商品を1個1,080円で200個仕入れ、1個400円の利益が出れば、

400円 × 200個 = 8万円

資料には、

「ネットから数秒で稼げます!」

と書かれていました。

また、Amazonだけでなくメルカリなど複数の販売先を利用することで、販売速度と利益額を上げられるという説明もありました。

理屈そのものは分かります。

安く仕入れて、高く売る。

転売というビジネスの基本です。

問題は、

「その利益が出る商品を、どうやって見つけるのか」

でした。

だから「商品を用意してくれる仕組み」は魅力的だった

そこで魅力的に感じたのが、セミナー参加者が利用できる転売プラットフォームでした。

自分で利益商品を探し続けなくても、サイト上に商品が用意される。

会員はその商品を購入し、販売されれば利益を得られる。

少なくとも当時の私には、そういう仕組みに見えていました。

これなら、「利益の出る商品を探す」という大変な作業を省略できます。

ところが、実際に利用していくと、別の問題が見えてきました。

利益の出る商品があっても、十分な数を買えないのです。


商品が投入された瞬間に競争が始まる

商品は、いつでも十分に用意されているわけではありませんでした。

新しい商品が投入されると通知が来ます。

私はChromeの通知機能まで設定していました。

通知が来たら、すぐにサイトへログインする。

商品を1つだけ選ぶ。

一つ選んだら都度、購入手続きをする。

そして商品一覧へ戻る。

すると、さっきまであった別の商品が、

SOLD OUT。

次の商品を見る。

それも、

SOLD OUT。

一つの商品を購入する手続きをしている間にも、ほかの商品がどんどん売れていくのです。

しかも、基本的には同じ商品を何個もまとめて購入することはできませんでした。

一商品につき一個。

そのため、通知が来てすぐにログインしても、一回の商品投入で購入できるのは2個、3個程度ということが珍しくありませんでした。

この時点で既に、

「利益の出る商品がある」ことと、「自分が十分な利益を得られる」ことは別の話

だったのです。

さらに50万円の上位プログラムへ

そして、この仕組みにはさらに上位のプログラムがありました。

参加費は、

50万円。

私は、この上位プログラムにも参加しました。

上位プログラムに参加すると、通常の商品とは別に、

高い利益率の商品を購入できる特別なルーム

を利用できるようになりました。

そこで強調されていたのが、

「高利益率」

でした。

中には、利益率50%とされる商品もありました。

「利益率50%」

この数字は、かなり魅力的に見えます。

1万円の商品なら5,000円。

10万円なら5万円。

そんな計算を頭の中でしてしまいます。

私は、

「ここで利益を増やせば、50万円の参加費も回収できる」

と考えました。

しかし、実際にはそう簡単ではありませんでした。


「利益率50%」でも商品が買えなければ意味がない

特別なルームでも、状況は同じでした。

商品が投入されると通知が来ます。

通知を見たら、すぐにログインする。

一つ購入する。

その間に別の商品が売れていく。

2個目を購入する。

3個目、4個目を買おうとすると、もうSOLD OUT。

そんなことの繰り返しでした。

利益率50%の商品がある。

それ自体は魅力的です。

しかし、

その商品を十分な数だけ買うことができない。

しかも、もう一つ大きな問題がありました。


高利益率なのに、商品の価格が安い

特別なルームに並ぶ商品は、単価の低いものが多かったのです。

たとえば、1,000円の商品で利益率50%なら、利益は500円。

3,000円の商品でも1,500円です。

「50%」

という数字だけを見ると非常に大きく感じます。

しかし、私の約100回の売買履歴を平均すると、商品単価は1,800円弱でした。

つまり、各商品の購入で実際に得られる利益額はそれほど大きくありません。

しかも、一商品一個ずつ購入手続きをする仕組み。

一度の商品投入で購入できるのも数個程度。

ここで私は、

「利益率」と「利益額」はまったく別のものだ

ということを実感しました。

今の私なら、こう考えます。

利益額 = 商品単価 × 利益率 × 購入可能数量 × 商品投入頻度

利益率だけが50%でも、

商品単価が低い。

購入可能数量が少ない。

商品投入頻度も低い。

これでは、大きな利益にはなりません。

しかし当時の私は、「50%」という数字に目を奪われていました。


そして商品投入も減っていった

最初の3か月は、特別ルームには週に1~2回程度、商品が投入されていました。

ただし、一回あたりの商品数はそれほど多くありません。

通知が来れば、すぐログインする。

買えるだけ買う。

それでも2個、3個。

最初のうちは、

「次回はもっと買えるかもしれない」

と思っていました。

ところが、半年ほどすると、商品投入は週1回、

1年後には月1回になっていきました。

そして1年半ほど経った頃には、月1回の商品投入、しかも単価数百円の商品1個しか購入できなくなり、

2年後にはほとんど更新されなくなりました。

私はこの転売プラットフォームを約2年4か月利用しました。

そこで得られた利益は、

17万円にも届かなかったと記憶しています。

最初のセミナーに10万円。

さらに上位プログラムに50万円。

合計60万円。

それに対して、私がこの仕組みから得た利益は17万円弱でした。

もちろん、これはあくまで私自身の利用結果です。

ほかの参加者がどれだけ利益を得ていたのかまでは分かりません。

ただ少なくとも私にとっては、

「利益率の高い商品を買える仕組み」と、「実際に利益を得られる仕組み」は、まったく違うものでした。

2026年、久しぶりに当時のサイトを開いてみた

この記事を書くにあたり、久しぶりに当時利用していたサイトを開いてみました。

驚いたことに、

2026年現在もサイト自体は残っていました。

そこで、現在掲載されている商品を改めて調べてみました。

すると、興味深いものを見つけました。

商品画像のファイル名です。

そこには、画像がサーバーに保存された日時と一致するとみられる情報が残っていました。

たとえば、ファイル名の数字と、その後に続く16進数の情報を照合すると、同じ日時を示すものがあります。

もちろん、ここは慎重に考える必要があります。

画像が保存された日時=商品が実際に投入された日時

とは限りません。

画像を使い回した可能性もあります。

過去の商品が削除されている可能性もあります。

そのため、

「この時期を最後に商品投入が止まった」

と断定することはできません。

ただ、現在残っているデータを見ると、興味深いことが分かりました。

高利益率の特別ルームに残っていた商品画像

現在、高利益率の商品を扱っていた特別ルームには、6商品の画像が残っていました。

価格は、

740円。

1,000円。

1,050円。

1,300円。

1,750円。

3,000円。

最高でも3,000円です。

そして、現在はもちろんすべてSOLD OUT表示。

さらに、それらの商品画像のファイル名から読み取れる日時は、

2017年4月から2018年4月

に集中していました。

現在確認できる最も新しいものでも、

2018年4月9日。

一方、特別ルーム以外の通常ルームの商品カテゴリーを調べると、別のカテゴリーには2020年5月、さらに別のカテゴリーには2020年6月の日付と一致する商品画像が残っていました。

これだけで、特別ルームの商品投入が2018年4月で、通常ルームの商品投入は2020年5月で終わったとは言えません。

ただ少なくとも、

2026年現在残っている特別ルームからは、新しい商品画像を確認することができませんでした。

そして何より、私が驚いたのは商品の価格です。

740円から3,000円。

それを見た瞬間、

「ああ、そうだった」

と思いました。

8年前の記憶が蘇った

通知が鳴る。

すぐにログインする。

一つ商品を買う。

一覧に戻る。

もうSOLD OUT。

別の商品もSOLD OUT。

やっと買えても、1商品1個か2個。

そして商品の単価は低い。

仮に740円の商品で利益率50%なら、

370円。

3,000円の商品でも、

1,500円。

それを2個、3個購入する。

そして、次の商品投入を待つ。

当時、私が感じていた、

「利益率は高い。でも、これでは利益が増えない」

という感覚。

2026年になってサイトに残るデータを調べてみると、少なくとも現在残っている商品の姿は、私の記憶とよく一致していました。

私が見ていたのは「50%」だった

今になって振り返ると、当時の私が何を見誤っていたのかがよく分かります。

私は、

「利益率50%」

を見ていました。

しかし、本当に見るべきだったのは、その先です。

その50%の商品はいくらなのか。

何個買えるのか。

どれくらいの頻度で供給されるのか。

その状態は継続するのか。

つまり、

利益率を掛ける「母数」と「供給量」

です。

これは株式投資でも同じです。

利益率50%でも、売上が100万円なら利益は50万円。

利益率10%でも、売上が100億円なら利益は10億円です。

重要なのは「率」だけではありません。

その率を、何に掛けることができるのか。

当時の私には、この視点が足りませんでした。

「儲かるか」ではなく、「なぜ儲かるのか」

投資案件や副業の説明では、魅力的な数字が並びます。

「利益率50%」

「月利○%」

「年間○万円」

「市場規模○兆円」

数字は分かりやすい。

だから、人を動かします。

でも今の私は、その数字を見たときに、まず別のことを考えます。

その利益は、どこから生まれるのか。

誰がお金を払うのか。

十分な需要はあるのか。

十分な供給量はあるのか。

自分にも再現できるのか。

参加者が増えても成立するのか。

そして、

その構造は持続するのか。

数字そのものではなく、その数字を生み出している仕組みを見る。

私はこの失敗から、少しずつそう考えるようになりました。

「利益は、誰が、どのような仕組みで生み出しているのか。」

そして、もう一つ。

こちらの方が重要だったかもしれません。

「誰が、誰に、何のために利益をもたらす必要があるのか。」

私を儲けさせる理由はあったのか

今なら、こう考えます。

セミナーの運営側は、参加者が集まれば参加費を得られます。

上位プログラムに申し込む人が増えれば、さらに収入が増えます。

つまり、

参加者を集めることには、明確な経済的メリットがあります。

では、その後はどうでしょう。

会員のために利益商品を探す。

商品を仕入れる。

販売する。

その利益を会員に還元する。

当然、そこには手間がかかります。

しかも、私が利用したサービスでは、会員が購入できる商品の量は、運営側が用意する商品数に左右されました。

運営側がどのくらい商品を大量購入し、会員にその何割の商品を供給してくれるのか、会員側からは解らない。

商品が会員向けに大量に供給されれば、会員は多くの利益を得られる。

少量しか供給されなければ、利益も少ない。

実際、私が経験したのは後者でした。

ここで、今の私なら一つの質問をします。

運営側には、私を継続的に儲けさせる経済的な理由が、本当にあったのだろうか。

もちろん、まったく利益を出させる必要がなかったわけではありません。

次の新しい会員を増やすためには、プラットフォームそのものが続いている必要があります。

そして、「実際に利益が出る仕組み」であることを示すためには、ある程度は利益の出る商品を投入し続ける必要もあります。

しかし、それと、既存の会員一人ひとりに、支払った参加費以上の利益を継続的に得てもらうことは別の話です。

運営側にとって重要なのは、サービスが成立し、新しい参加者が入り続けること。

必ずしも、私が60万円以上を回収できることではありません。

参加してもらうことには明確なメリットがある。
しかし、参加した後の私を、参加費以上に儲けさせ続けることにも、同じくらい強いメリットがあったのか。

当時の私は、その点を考えていなかったわけではありませんが、商品単価、購入可能量、購入可能頻度の話と同じく、深くは考えていませんでした。

そして、この「誰が、どこから利益を得る仕組みなのか」という視点が甘かったことは、ほかの投資案件にも共通していました。

👉第19話「投資案件で2,700万円を失った理由|私が見誤った『儲かる構造』」

この経験は、今の投資にもつながっている

今、私は半導体やAI関連企業を見るときにも、同じことを考えています。

「AIが成長する」

だけでは、投資理由としては足りません。

AIが成長したとき、

どこに需要が発生するのか。

GPUなのか。

メモリなのか。

ネットワークなのか。

光通信なのか。

電力なのか。

冷却なのか。

そして、その需要増加が、本当に企業の売上と利益につながるのか。

「AIは伸びる」

ではなく、

「AIが伸びた結果、誰の売上が、なぜ増えるのか」

まで考える。

私はこれを、

「構造を見る」

ということだと思っています。

今では当たり前のようにやっていることです。

しかし、その原点をたどっていくと、華々しい成功体験ばかりではありません。

むしろ、

「利益率50%」

という言葉に惹かれ、通知が鳴るたびにサイトを開き、数百円、数千円の利益を求めてSOLD OUTの商品を追いかけていた自分に行き着きます。

この経験からの学び

私はこの経験から、

「儲かる話」と「儲かる構造」は違う

ということを学びました。

利益率が高い。

成長率が高い。

市場が拡大している。

利用者が増えている。

それだけでは足りません。

その数字が生まれる仕組みを分解して、

自分のところまで利益が届く構造になっているのか。

そこまで見なければ、本当に魅力的な投資なのかは分かりません。

私は過去に何度も、

「夢」や「数字」

を買ってきました。

👉 第18話「私は『夢』を買っていました」

でも今は、

その数字を生み出している構造を買いたい。

そう考えています。

最初のプログラムに10万円。

さらに上位プログラムに50万円。

約2年半、毎日サイト更新を待ち続けて、得られた利益は17万円弱。

決して成功体験とは言えません。

でも、この経験があったからこそ、

私は今、

「儲かる話」ではなく、「儲かる構造」を見る。

そう考えるようになったのだと思います。


次回予告

FXで大きな損失を出し、その後もさまざまな投資案件で失敗しました。

それでも私は、投資をやめませんでした。

なぜだったのか。

単に「取り返したかった」からなのか。

それとも、別の理由があったのか。

次回は少し視点を変えて、

「それでも、なぜ私は投資を続けたのか」

について振り返ってみたいと思います。

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この記事を書いた人

長年、半導体分野の技術開発に携わった経験を持つ会社員投資家です。昼は会社員、夜と週末は投資の成功と失敗を振り返りながら、半導体・AI企業の成長構造や売買判断について書いています。

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