人類は、何かを高速化すると、必ず別の問題にぶつかります。
車が速くなると、ブレーキ性能が問題になる。
通信が速くなると、電力消費が問題になる。
CPU性能が上がると、今度は発熱が問題になる。
技術の進化とは、
「限界との戦い」
なのかもしれません。
そして半導体業界は、その歴史の連続でした。
半導体業界は、「ボトルネック」が移動し続けてきた
半導体業界では長年、
「より速く」、「より小さく」、「より高性能に」
という競争が続いてきました。
ですが、ある問題を解決すると、今度は別の問題が限界になります。
例えば、トランジスタを微細化する。
すると性能は向上する。
ですが今度は、
- 消費電力
- 発熱
- 歩留まり
- 製造コスト
などが問題になっていく。
クロック周波数を上げれば、
今度は熱が限界になる。
CPU性能を上げる。
すると今度はメモリ帯域が足りなくなる。
GPUを大量に並べれば、
通信速度や電力供給が問題になる。
つまり技術の進化とは、
「ボトルネックが移動する歴史」
なのかも知れません。
AI市場でも、同じことが起きている
現在のAI市場でも、まったく同じことが起きています。
最初に市場が注目したのは、GPUでした。AIモデルの学習には、膨大な並列計算能力が必要だったからです。
すると今度は、
「GPUへデータを高速供給できない」
という問題が現れ始めました。
そこで次に注目されたのが、
HBM(高帯域メモリ)
です。
GPU性能が上がるほど、
今度は、
- メモリ帯域
- パッケージ技術
- CoWoS
- データ転送
などが重要になっていった。
そして現在はさらに、
- 電力
- 発熱
- 冷却設備
- 通信インフラ
などへ市場の関心が移り始めています。
GPU。
HBM。
高速通信。
冷却設備。
そして最後は、電力。
AIの計算能力が上がるほど、新しい制約が次々と現れる。
市場は今、
「次はどこが限界になるのか」
を探し始めているようにも見えます。
「AI関連株」ではなく、「制約」を見る
最近は、
「AI関連」
というだけで注目される企業も増えています。もちろん、本当に重要な技術を持つ企業もあります。
ですが私は最近、
「どの会社がAI関連か」
より、
「どこが限界になり始めているのか」
を見るようになりました。
なぜなら、巨大技術の進化では、次に問題になる場所へ、巨大な投資が集まるからです。
GPU性能が限界に近づけば、
HBMが重要になる。
HBMが足りなくなれば、
パッケージ技術が重要になる。
GPUを大量接続すれば、
通信速度が問題になる。
消費電力が増えれば、
今度は冷却と電力インフラが問題になる。
つまり市場は、単に「AI」に投資しているのではなく、
「次の制約」へ投資し続けていると見ることもできます。
ストレージは、本当にボトルネックにならないのか
現在のAI市場では、GPUやHBMが最も大きなボトルネックとして注目されています。
実際、今のAIでは、「GPUへ超高速でデータを供給すること」そのものが大きな課題になっています。
GPU性能が上がるほど、
- メモリ帯域
- データ転送
- 通信速度
などが限界になり始める。
だから現在は、HBMや高速通信が極めて重要視されているのです。
一方で、ストレージはどうでしょうか。
もちろん私は、
ストレージも将来的には非常に重要になる
と思っています。
AI時代は、データそのものが爆発的に増えていく時代だからです。
- 学習データ。
- 動画。
- 推論ログ。
- AI生成コンテンツ。
- 自動運転データ。
生成・蓄積される情報量は、今後さらに増えていく可能性があります。
ですが少なくとも現時点では、
「大量データを保存すること」
より、
「GPUへ超高速でデータ供給すること」
の方が、より深刻な制約になっているのだと思っています。
つまり現在は、
「保存」
より、
「計算中の速度」
の方が重要になっているのです。
ですが長期的に見れば、ストレージやデータ保存も、より大きなテーマになっていくでしょう。
最近では、ストレージ企業までAI関連として注目され始めています。
例えばキオクシアのようなNAND/SSD企業も、AIデータセンター需要の拡大によって再評価され始めています。
もちろん現在のAI市場では、GPUやHBMほど切迫したボトルネックではないのかもしれません。
ですが市場は今、
「AI時代、本当に次に足りなくなるものは何か」
を探し始めているようにも見えます。
さらに興味深いのは、現在HBMを主導している企業の多くが、
「HBMへの巨額投資」
を進めていることです。
HBMは現在、AI向けメモリとして極めて高い利益率と需要を持っています。
そのため、SamsungやSK hynix、Micronなどは、
「HBMへ経営資源を大きく振り向け始めています。」
すると今度は、NANDやSSD側への投資が相対的に弱くなる可能性も出てきます。
実際、Bloombergでは、
「競合がHBMへ傾倒していることが、NAND専業色の強いキオクシアに有利に働く可能性がある」
という見方が紹介されていました。
つまり市場は今、単にGPUだけではなく、
「AI時代に、本当に次に不足するものは何か」
を探し始めているようにも見えます。
そして更に興味深いのは、現在HBMを主導している企業の多くが、
NANDやSSDなどのストレージ技術も持っている
ということです。
例えば、
Micron Technology
Samsung Electronics
SK hynix
などは、HBMだけではなく、
DRAMやNANDも含めた「メモリ階層全体」を持っています。
つまりAI時代は、単なるGPU競争ではなく、
- HBM
- DRAM
- NAND
- SSD
- ストレージ
まで含めた、
「メモリ階層全体」
の競争になっていくのかもしれません。
半導体業界は、何度も同じことを繰り返してきた
もちろん、こうした巨大投資が永遠に続くとは思っていません。
半導体業界は、何度もサイクルを繰り返してきました。これまでの触れてきたように、
需要急増 → 設備投資の増加 → 供給能力の増加 → 供給過多 → 価格が崩れる。
半導体市場では、この流れが何度も繰り返されてきました。
だから私は、「AIだから永遠に伸びる」とは考えていません。
むしろ、
- 次に何が限界になるのか
- どこで供給過多になるのか
- 本当に必要な技術は何なのか
を考え続けたいと思っています。『半導体サイクルを理解すると、投資の見え方が変わる』
私は、「未来」より「構造」を理解したい
もちろん、未来を正確に予測することはできません。
次のボトルネックが、
通信なのか、
電力なのか、
ストレージなのか、
それとも全く別のものなのかは分かりません。
ですが私は今も、
「市場は次に何に困り始めているのか」
を考え続けています。
それは私が半導体やAIに惹かれてきた理由、
「未来を当てたい」
ではなく、
「構造を理解したい」
と同じなのかもしれません。

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